詐欺・脅迫とは?宅建試験の重要ポイントを徹底解説

詐欺・脅迫の定義

詐欺(さぎ)とは、他人をだまして勘違いさせる(錯誤(さくご)に陥らせる)ことによって、契約などの意思表示をさせる行為です。 一方、強迫(きょうはく)とは、他人に害を加えることを伝えて恐怖心(畏怖(いふ))を生じさせ、その恐怖によって意思表示をさせる行為を指します。

民法第96条1項では、詐欺または強迫による意思表示は「取り消すことができる」と定められています。

詐欺・脅迫のポイント

宅建試験で問われる詐欺・強迫のポイントは、主に「誰が」「誰に」行い、「第三者」が登場した場合にどうなるか、という点に集約されます。特に詐欺と強迫では第三者の扱いが大きく異なるため、その違いを明確に理解することが重要です。

| ケース | 詐欺の場合 | 強迫の場合 | |:---|:---|:---| | 当事者間 | 騙された人(表意者)は常に取り消せる。 | 脅された人(表意者)は常に取り消せる。 | | 第三者が詐欺・強迫 | 契約の相手方が、第三者による詐欺の事実を知っていた(悪意)、または**知ることができた(有過失)**場合に限り、取り消せる。 | 契約の相手方が善意・悪意に関わらず、常に取り消せる。 | | 取消しと第三者 | 詐欺による取消しは、善意でかつ過失がない(善意無過失)第三者には対抗(主張)できない。 | 強迫による取消しは、善意の第三者にも対抗できる。 |

【覚え方のコツ】

  • 被害者の保護度合いで覚える!

    • 強迫は被害者が一番かわいそう → どんな状況でも(相手方や第三者が善意でも)保護され、常に取り消しを主張できる「最強」の取消権と覚えましょう。
    • 詐欺は騙された側にも少し落ち度があるかも → 何も知らないで取引に入った「善意無過失の第三者」が現れたら、その第三者を保護する、と覚えます。
  • 虚偽表示との比較で覚える!

    • 虚偽表示(民法94条)で保護される第三者は「善意」であればOKです。
    • 詐欺で保護される第三者は「善意」に加えて「無過失」まで要求されます。この要件の違いは頻出ポイントです。
📝

詐欺・脅迫」― 民法の過去問、何問解ける?

権利関係の過去問を多数収録。解説付きで読んだ知識をその場で定着させましょう。

具体例で理解する詐欺・脅迫

【詐欺の具体例】 Aさんが、Bから「この絵は有名画家の真作だ」と騙されて、高額な絵画を購入する契約をした。後日、贋作だと判明した。

  • 当事者間: AさんはBとの契約を、詐欺を理由に取り消すことができます。
  • 第三者が登場: Bがその絵を、詐欺の事実を知らない(善意無過失の)Cさんに転売してしまった後に、AさんがBとの契約を取り消しても、AさんはCさんに絵の返還を請求することはできません。

【第三者による詐欺の具体例】 地面師のCさんが、Aさんを騙して、Aさん所有の土地をBさんに売却させた。

  • この場合、買主のBさんが、Cさんによる詐欺の事実を**知っていたり(悪意)、注意すれば知ることができた(有過失)**のであれば、AさんはAB間の売買契約を取り消せます。
  • しかし、BさんがCによる詐欺の事実を全く知らず、知ることにも過失がなかった(善意無過失)場合、Aさんは契約を取り消すことができません。

【強迫の具体例】 Aさんが、Bから「この土地を売らなければ、家族に危害を加える」と脅され、恐怖心からBに土地を売却する契約をした。

  • 当事者間: AさんはBとの契約を、強迫を理由にいつでも取り消すことができます。
  • 第三者が登場: Bがその土地を、強迫の事実を全く知らない(善意の)Cさんに転売した後でも、Aさんは強迫を理由に契約を取り消し、Cさんに対して土地の返還を請求することができます。

試験対策:ひっかけに注意!

  1. 「無効」ではなく「取消し」 詐欺・強迫による意思表示は「無効」ではなく、「取り消すことができる」行為です。取り消されるまでは一応有効な契約として扱われます。ただし、強迫の程度が著しく、表意者の意思の自由が完全に失われている場合は「無効」となることもあります。

  2. 詐欺における第三者の保護要件 詐欺で第三者が保護されるのは「善意」だけでは足りず、「無過失」まで必要です。 「善意の第三者に対抗できない」という選択肢は誤りです。

  3. 代理人が詐欺・強迫された場合 代理人が相手方から詐欺や強迫を受けた場合、その事実があったかどうかは「代理人」を基準に判断します(民法101条)。 しかし、それによって発生した取消権は、契約の効果が帰属する「本人」が行使します。

ここまで読んだ知識を定着させよう

権利関係の過去問を多数収録。解説付きで理解を深められます。

よくある質問

Q: 詐欺や強迫による契約は、いつまで取り消せますか?

A: 取消権は、追認(ついにん)をすることができる時(騙されたと知った時や、脅迫状態を脱した時)から5年間行使しないとき、または、契約の時から20年が経過したときに時効によって消滅します(民法126条)。

Q: 代理人が相手方を騙した場合、本人がその事実を知らなければ契約は取り消されませんか?

A: いいえ、取り消される可能性があります。代理人が相手方に対して詐欺を行った場合、その事実は代理人を基準に判断されるため、相手方は契約を取り消すことができます。 このとき、本人が詐欺の事実を知っていたかどうかは関係ありません。

この用語に関連する過去問に挑戦

この用語の理解度をチェックしましょう。宅建過去問アプリで関連する過去問を解くことができます。

過去問に挑戦する


※ この記事は2026年度宅建試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。

腕試しクイズ

詐欺や強迫による契約は、いつまで取り消せますか?

もっと問題を解きたい方へ

全4科目の過去問を収録。解説付きで知識を定着させましょう。

公開日: 2026/4/30 / 更新日: 2026/5/25

権利関係の他の記事

贈与とは?宅建試験の3つの重要ポイントを解説

贈与とは、財産を無償で与える意思表示と受諾で成立する契約(民法549条)。宅建試験では、書面によらない贈与の解除(民法550条)、贈与者の担保責任、負担付贈与・死因贈与といった特殊な贈与が頻出。これらの重要ポイントを条文番号と共に詳しく解説します。

質権とは?宅建試験の留置的効力と優先弁済を解説

質権とは、債権の担保として目的物を占有し、返済されない場合に優先弁済を受ける権利です。宅建試験では、目的物の占有が必要な留置的効力と、他の債権者より優先して弁済を受ける優先弁済的効力が重要です。民法342条の定義から、質権のポイントをわかりやすく解説します。

心裡留保とは?宅建試験の原則・例外・第三者

心裡留保とは、自分の本当の意思と違うことを自覚して行う意思表示のことです。宅建試験では民法93条1項が根拠となり、原則無効とならないものの、相手方が悪意・有過失の場合は無効となります。第三者との関係性も重要です。宅建試験の重要ポイントを具体例を交え、原則・例外・第三者との関係の3つの視点から詳しく解説します。

建替え決議とは?原則と要件緩和の2段階を解説

建替え決議とは、老朽化した建物を解体し新築する際の区分所有者の特別な集会決議です。2026年4月1日施行の改正法に対応し、原則区分所有者・議決権の各4/5以上、要件緩和時は各3/4以上で決議されるポイントを解説します。宅建試験対策に必須の知識です。

管理者とは?区分所有法と宅建試験の重要ポイント

宅建試験の権利関係で問われる「管理者」とは、区分所有建物の共用部分等を保存し、集会の決議を実行する者です。区分所有法第25条に基づき、選任・解任は集会の普通決議が原則。宅建試験で問われる3つの重要ポイントを条文番号と共にわかりやすく解説します。