自ら売主の制限とは?宅建試験の重要ポイントを徹底解説

自ら売主の制限の定義

自ら売主の制限とは、宅地建物取引業者(たっちたてものとりひきぎょうしゃ、以下「宅建業者」)が自ら売主となり、宅建業者ではない一般の買主との間で宅地または建物の売買契約を締結する際に、買主を保護するために宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)によって課される特別な8つの制限のことです。

不動産取引の専門家である宅建業者と、知識や交渉力で劣る一般消費者との間には大きな差があります。 この情報格差などから買主が一方的に不利な契約を結ばされることがないように、宅建業法は売主となる宅建業者に対して厳しい規制を設けています。 この制限は、通称「8種制限」とも呼ばれます。

自ら売主の制限のポイント

宅建試験で特に重要な「自ら売主の制限」は以下の3つです。これらは買主保護の観点から、民法の原則よりも買主に有利な内容となっています。

1. 契約不適合責任についての特約の制限(宅建業法第40条)

目的物(宅地や建物)に種類や品質に関する契約内容との不適合(例:雨漏り、シロアリ被害など)があった場合の売主の責任を「契約不適合責任」といいます。

  • 原則: 民法の規定よりも買主に不利となる特約は、すべて無効となります。
  • 例外: 契約不適合を売主に通知すべき期間を「引渡しの日から2年以上」とする特約のみ有効です。 これより短い期間(例えば1年)を定める特約は無効となり、原則通り民法の規定(不適合を知った時から1年以内の通知)が適用されます。
  • 覚え方: 「責任は重いから、フ(2)年以上の特約でなければダメ!」と覚えましょう。

2. 損害賠償額の予定等の制限(宅建業法第38条)

買主の債務不履行(例:代金の不払い)を理由に契約が解除された場合のペナルティについて、高額な請求ができないように制限されています。

  • 内容: 損害賠償額の予定と違約金を合計した額が、代金の額の10分の2(20%) を超える定めをしてはなりません。
  • 効果: もし10分の2を超える定めをしても、契約全体が無効になるわけではなく、超える部分のみが無効となります。 例えば、代金3,000万円の物件で違約金を800万円(10分の2を超える)と定めても、600万円までしか請求できません。

3. 手付の額の制限等(宅建業法第39条)

契約時に買主から預かる手付金についても、金額や性質に制限があります。

  • 金額の制限: 宅建業者は、代金の額の10分の2(20%) を超える額の手付を受領することができません。 こちらは「超える部分が無効」ではなく、「超えて受領すること自体」が禁止されています。
  • 性質の制限: 宅建業者が受け取った手付は、どのような名目であっても「解約手付」とみなされます。 これにより、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄することで、売主(宅建業者)は受け取った手付金の倍額を現実に提供することで、契約を解除することができます。
📝

自ら売主の制限」― 宅建業法の頻出論点、押さえてる?

宅建業法の過去問を多数収録。解説付きで読んだ知識をその場で定着させましょう。

具体例で理解する自ら売主の制限

【ケース1:契約不適合責任】 売主である宅建業者Aと、買主B(宅建業者ではない)が、中古住宅(代金4,000万円)の売買契約を締結しました。契約書に「契約不適合責任の通知期間は、引渡しの日から1年間とする」という特約がありました。引渡しから1年半後に雨漏りが発覚した場合、BはAに責任を追及できるでしょうか?

→ 追及できます。 通知期間を「引渡しの日から2年未満」とする特約は、買主に不利なため無効です。 したがって、民法の原則に戻り、Bは雨漏りの事実を知ってから1年以内にAに通知すれば、責任を追及することが可能です。

【ケース2:損害賠償額と手付金】 同じく、売主A(宅建業者)と買主B(非宅建業者)が、土地(代金5,000万円)の売買契約を締結します。

  • AがBに対し、手付金として1,200万円(代金の10分の2を超える)を要求した場合、これは宅建業法違反であり、Aは1,000万円までしか受領できません。
  • 契約書で「買主Bの債務不履行による違約金は1,500万円とする」と定めた場合、この定めは1,000万円を超える部分(500万円)が無効となり、違約金は1,000万円となります。

試験対策:ひっかけに注意!

  • 適用範囲のひっかけ: この8種制限が適用されるのは、「売主が宅建業者」で「買主が宅建業者でない」 場合に限られます。 業者間の取引や、宅建業者が媒介・代理に入るだけの取引には適用されません。 試験では「宅建業者Aが、宅建業者Bとの間で〜」という形で出題され、制限が適用されないケースを問う問題が頻出です。
  • 損害賠償額と手付金の効果の違い: 「損害賠償額の予定」は超える部分のみ無効ですが、「手付の額」は超えて受領すること自体が禁止されています。この違いを混同しないようにしましょう。
  • 契約不適合責任の起算点: 特約が有効になるのは「引渡しの日から2年以上」です。「契約締結の日から」ではない点に注意してください。

ここまで読んだ知識を定着させよう

宅建業法の過去問を多数収録。解説付きで理解を深められます。

よくある質問

Q: 宅建業者同士の不動産売買で、「契約不適合責任は一切負わない」という特約を結ぶことはできますか?

A: はい、できます。自ら売主の制限(8種制限)は、買主が宅建業者ではない一般消費者を保護するためのルールです。 そのため、プロ同士である宅建業者間の取引には適用されず、当事者の合意によって契約不適合責任を免責する特約も有効となります。

Q: なぜ損害賠償額の予定や手付金の上限が「代金の10分の2」と定められているのですか?

A: これは、買主が不当に高額なペナルティや手付金を要求されることで、契約の解除を不当に困難にさせられる事態を防ぐためです。万が一、買主が契約を解除せざるを得なくなった場合でも、過大な経済的負担を負うことがないように保護する目的があります。

Q: 自ら売主の制限に違反した宅建業者には、どのような罰則があるのですか?

A: 自ら売主の制限に違反した場合、宅建業者は監督処分(指示処分や業務停止処分)の対象となる可能性があります。また、無免許で宅建業を営んだ場合は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。詳細は最新の法令を確認してください。

この用語に関連する過去問に挑戦

この用語の理解度をチェックしましょう。宅建過去問アプリで関連する過去問を解くことができます。

過去問に挑戦する


※ この記事は2026年度宅建試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。

腕試しクイズ

宅建業者同士の不動産売買で、「契約不適合責任は一切負わない」という特約を結ぶことはできますか?

もっと問題を解きたい方へ

全4科目の過去問を収録。解説付きで知識を定着させましょう。

公開日: 2026/5/22 / 更新日: 2026/5/22

宅建業法の他の記事

監督処分とは?3つの段階と免許取消後の期間を解説

宅建業法における監督処分とは、宅建業者が違反した場合に国土交通大臣等が課す行政処分です。指示処分、業務停止処分(1年以内)、免許取消処分(取消後5年間再免許不可)の3段階を解説。誰が誰にどんな処分をできるのか、宅建試験の重要ポイントを具体的に解説します。

損害賠償額の予定等の制限とは?上限20%と無効範囲を解説

宅建業法における「損害賠償額の予定等の制限」とは、売主が宅建業者の場合、買主の債務不履行による損害賠償額や違約金の合計が売買代金の20%を超えてはならない規制です。超える部分は無効となります。宅建試験の重要ポイントである適用場面、上限額20%、無効となる範囲について詳しく解説します。

誇大広告の禁止とは?宅建業法32条のポイント3つ

宅建業法32条で定められた「誇大広告の禁止」について解説します。宅建業者が行う全ての広告が対象で、著しく事実に反する表示や誤認させる表示は禁止です。試験対策として、対象者、対象広告、禁止される表示の3つのポイントを具体例を交えて詳しく解説します。不動産取引で損をしないために、このルールを理解しましょう。

広告の規制とは?宅建業法3つの柱を解説

宅建業法における広告の規制は、消費者を守るための重要なルールです。誇大広告禁止(32条)、広告開始時期の制限(33条)、取引態様の明示義務(34条)の3つの柱を、宅建試験の重要ポイントとして具体的に解説します。不動産広告の基本を理解し、試験対策に役立てましょう。

業務上の規制とは?無免許営業の罰則と免許権者を解説

業務上の規制とは、宅建業者が遵守すべきルールの総称です。宅建業法に基づき、購入者保護と円滑な流通を目指します。無免許営業には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。免許権者の違いや、宅建試験で問われる重要ポイントを条文番号(第3条、第12条)と共に具体的に解説します。